2011年1月24日月曜日

1月のひとりごと


New Yearの瞬間、サンフランシスコのベイブリッジ付近から盛大に花火が上がります。
日本の花火職人さんも関わっているようで、アメリカらしからぬ繊細な綺麗な花火でした。

さて、2011年の1月もそろそろ終わり。
一年の12分の1があっという間に終わってしまうかと思うと、一年もあっという間に過ぎそうですね。

年始にアメリカから聞こえてきたニュースとして、おそらく失業率の大幅改善のニュースがあるのではないでしょうか。
アメリカの経済は回復に向かっている、なんてアメリカとしては言いたいようですが、NYダウやNASDAQの平均株価は全く回復の兆しが見られません。

実は、この失業改善の数字、からくりがありまして。

失業者=職を探しているけど職がない人、をこの統計では指します。つまり、職がないけど職を探してない人は失業者にあたりません。
今回の統計では、職を探すことを諦めた人が急増したことで、統計的に失業者が減ったように見えているだけです。

つまり、状況としては改善しているどころか、悪化しているということです(あまりに仕事が見つからず諦めた人達が急増、という意味で)。


こういったトリックのある統計を、意図的に全世界に発信するところがアメリカらしいなあと。


こういった手法、アメリカはよく使ってきます。


他の例として、アメリカは選挙の得票率が高くて国民の政治への感心が高い、なんて思われがちですが、これもウソウソ。
アメリカでは、国籍を持っていれば誰でも投票者になれるわけではなく、「選挙人登録」をしないと投票者になれません。
つまり、もともと政治に全く感心のない人は、わざわざ選挙人登録なんてしないのです。
アメリカが算出している得票率の母数は、当然「選挙人登録をした人」ですから、そもそも選挙人登録をしてない人達は統計に入っていません。
そりゃ、、、わざわざ選挙人登録をする母集団ですから、投票にも行きますよね。。というからくりです。


アメリカから入って来るこういった統計数字のニュースは鵜呑みにしないで、その裏をよく読んでみることが大事です。


ではまた来月。

2011年1月20日木曜日

youku

youkuという中国の動画共有サイト、ご存知ですか?

http://www.youku.com/

サイトに行っていただければわかると思いますが、、、youtubeのパク◯じゃ。。。と思わされるサイトです。
中をみてみると、日本のドラマやアニメ、バラエティなどが、中国語の字幕をつけてアップされています。
youtubeと違って、動画の再生時間に制限がないため、ドラマ、丸々一回分がきれ〜いにアップされています。それも、放送日の翌日にはアップされているという几帳面さ。
ちょっとちょっと〜違法サイトじゃない〜と思わされますが。。

驚いたことに、これが去年の12月にニューヨーク証券取引所に約3000億円で上場。なんと、youtubeの上場当時の時価総額を上回っています。

youtubeと同じくyoukuも、主な収入は広告収入。日本の財産が大量に使われて、ものすごいお金が動いてますよ。。と、なんだか首をかしげたくなる状況です。

ニューヨーク証券取引所に上場するにあたって、さすがにアメリカのドラマやニュースなどのコンテンツは一斉に削除した模様。
あと、なぜだか、日本のNHKの番組も削除したようです。
でも、民放の番組は、今でも見放題。
ゲゲゲの女房は見られないけど、ぐるナイは見られます。

偉そうな事を書きましたが、海外にいる日本人にとって、このサイトはかなり重宝するんですよね。。
だって、日本のドラマやバラエティやアニメが、ただで見られるんですもの。 
良くないと思いつつ、見たいものは見たい。

結局、倫理観うんぬんより、多くの人のニーズをとらえていること、他よりも早いスピードでサービスを浸透させられる企業が勝つ時代ということなのでしょうか。

2011年1月17日月曜日

BEARS 2011


来月ついに開催されます、BEARS2011。
UCバークレーのElectrical Engineering and Computer Scienceのdepartmentによって開催される、一年のうちで一番大規模なカンファレンスの1つです。今年も楽しんで参加してこようと思います。
※昨年参加した様子は、2010年2月のエントリーをご覧ください→http://faius.blogspot.com/2010_02_01_archive.html

昨年のテーマは、「From Cloud to Sensors」。半導体からサービスに関してまで、幅広くカバーしていました。
クラウドに関する発表もありましたが、それも全体の一部。

それが、今年のテーマは、「Bringing intelligence to tomorrow's client/cloud platform」。
クラウドに関連した技術、プラットフォーム、製品、サービス、、などなど、クラウドを中心にすえて、カンファレンスが進められそうです。楽しみですね。

パネルディスカッションも見所の一つ。
昨年は、環境問題に対して、Computer Scienceが考えるべき課題について、議論が行われました。
今年は「Who Owns the Future of the Mobile Client?」
モバイルに関する話しも沢山聞けそうですね。

午後は、好きな研究室を回って学生の発表を聞いたり質疑応答できる時間になりますので、特にこの研究室を見て来てほしい!こんな質問をしてきてほしい!など、ありましたがご要望ください。

↓当日のアジェンダは以下。
http://www.eecs.berkeley.edu/BEARS/

2011年1月12日水曜日

GooglePC


Google Chrome OSを搭載したPCの発売が発表されましたが、パソコン自体の情報はまだあまり日本の記事には出ていないようですので、本日はMITのテクノロジーレビューから2つ、Google PCに関する記事をご紹介します。

一つ目の記事は、「ブラウザが全て!」というタイトルで、クラウドを採用するGooglePCの特性について書かれています。
http://www.technologyreview.com/web/26882/?p1=MstVwd&a=f
簡単に、書かれている内容をまとめると以下のような感じです。

・現在、大勢の人間で、GooglePCのプロトタイプ(Cr-48, a notebook)をテスト中
・クラウドに対応するため3Gを搭載する予定(携帯やタブレット感覚?)。Verizonの3Gサービスを2年間無料でつけるかも。
・GooglePC用のアプリケーションマーケットをオープンする予定(Androidマーケットのようなもの)
・ChromeOSとAndroidと、OSを分ける必要はあるのか?
 →ChromeOSでは、タッチパネルの機能がまだ開発されていないため、分けている。

Google ChromeブラウザをベースにしたChromeOSとAndroid。開発のスピードを優先して、PC用にはChromeOS、モバイルにはAndroidOSとしているようですが、今後一つに統一されるのでしょうか?


もう一つの記事は、「Googleは、Chrome OSを通して得た情報で何をたくらんでいるのか」というタイトルです。
http://www.technologyreview.com/computing/26936/?p1=A4
クラウドを採用するということは、いいかえれば、PCを利用するユーザの動きを、全てGoogleが把握できるということ。かなり貴重な個人情報になります。今までも、GmailやChromeブラウザを通して、ユーザの好みなどのデータを取得してきたGoogleですが、PC上の全ての情報となると、この価値は計り知れません。
広告収入が大きいGoogleにとっては、この情報の活用道は無限大であり、それが目的でクラウドPCを発売するのか?という声も聞かれます。

一方で、このように個人情報を利用することで、ユーザを不安にさせるのでは、政府の情報操作に使われるのでは、など、様々な懸念が提起されています。

この件については、Googleは、現在はプロトタイプテスト段階のため、利用ユーザのデータを詳細に集めているが、リリース後も集めるかはわからない、つまり現段階では未定、という回答のようです。また、ユーザの情報をどこまでクラウド側に残すかをユーザが設定できるようにすることで、個人情報に配慮することも考えている、とも回答していました。


Google検索やGmailがなくなったら生活が不便になるという人がかなりの数いるほど、Googleサービスの浸透率は高いですし、アメリカ政府は政府内システムとしてGoogleAppsの採用を決めるし、Androidはモバイル市場を席巻しているし、さらにGooglePCまで浸透したら、、、
世の中の情報全てがGoogleに集結する、なんて時代に向かうのでしょうか。

2011年1月7日金曜日

Groupon:グルーポン


明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年あけて、日本から飛び込んできたニュースといえば、グルーポンのおせち問題。
今のところ、グルーポン側よりも、おせちを作成した会社がやり玉にあげられていますね。


もしこれがアメリカだったら、、
全額返金+5000円程度の品では済まず、明らかに訴訟問題になっていたでしょう。
マックのコーヒーが熱かったぐらいで訴訟を起こし、被害者が勝訴してしまうような国ですから。
一年の始まりを台無しにされたから、自分のお給料額の◯%分の慰謝料を払え、などという話しも出てきそうです。

さて、このグルーポンという会社と、そのサービスについて、少し考察してみたいと思います。

まず、グルーポンという会社ですが、2008年にシカゴで創立された後、たった数年で世界10カ国以上に展開されるまでにいたった、急成長企業です。
創設者が少しおもしろくて、いわゆるITベンチャーにありがちな、コンピュータサイエンス出身ではなく、専攻は音楽。
会社の創立当初の思いとしては、「儲けること」よりも、「人々にもっと色んなサービスがあることを知ってもらいたい」という社会貢献的な気持ちから始めたサービスらしいです。
今でも、グルーポンの存在意義は、より多くのサービスを消費者に知ってもらうための「広告的意義」が大きい、と強調しています。


利用者からしてみれば、安く商品やサービスを購入できることが一番の目的です。
一方、企業側の目的は、きちんと定義されておらず、企業側に任されている感があり、これが、今回のようなグルーポン問題を引き起こす原因になっています。
考えられる目的別に、ちょっと考察してみましょう。


目的①:広告
グルーポンが提示している本来の目的である、広告を目的とした場合。
この場合は、問題が起こることはあまり考えられません。企業としては、宣伝広告費の一部として、本来より安く商品を提供して、消費者に使ってもらうことで、利用者を増やしていく。
サンプルを配ったり、モニターを募集したりといった手法と近く、企業側に「費用」という意識があることと、対象人数を最初から絞っているため費用の総額を事前に把握できるため、クーポン発行後に、会社側に急に不利益が生じることはないでしょう。


目的②:売り上げ増加
今回のおせち制作会社は、「売り上げ増加」を目的として、クーポンを販売したようです。
クーポン500個が完売した時の社長のつぶやき、「一店舗分の売り上げが稼げた!」。
これ、どう思いますか?
確かに、通常の販売方法であれば50ぐらいしか売れなかったところ、500売れたら、売価が半分だとしても約10倍の売り上げになります。
しかし、ここでは「コスト」の意識が全く欠如しています。
注文を受けてから材料の発注、人の配置を検討し始め、結局予定通りに販売すると大赤字になることがわかってきて、原価ぎりぎりのところでとりあえず販売。結局、全額返金+さらにコストがかかるという、イタイ事態を招いてしまいました。

そもそもこういった、一定の原価が確実に発生する商品をわざわざ値引きして売る、という形態が、グルーポンにあまり向いているとは言えないでしょう。
アメリカでのサービスを見ていても、原価がもともとないもの(マッサージなどのサービス)、売らないとどちらにしてもコストになるもの(ホテルの空き室)、または上記①の広告目的(お客さんが最近減っているレストランなど)が多く、確実な原価が発生するものをわざわざ値引きして売ることに意味を感じる企業はあまりいないようです。

あまりに初歩的な計算で、ここを見誤る人っているの?と思ってしまいますが、とにかく売り上げを上げて企業を成長させなくてはいけないとプレッシャーを感じている経営者にとっては、陥りやすい罠と言えるのではないでしょうか。


目的③:短期のキャッシュフロー改善
これが、一番まずいです。
グルーポンが問題になったのは今回のおせちが初めてではなく、去年の11月にも京都のある飲食店で問題になったことをご存知でしょうか。

この会社は、倒産危機にあえいでいました。来月の借入金の支払いも間に合うかわからない。
会社というのは、どんなに資産があっても、ある日のキャッシュがマイナスになったら倒産ですから、いかにして現金を調達するかは、死活問題です。

そこで、目をつけたのがグルーポン。
このサイトを通せば、沢山のクーポンを即日売ることができ、即日に消費者の決済が行われる。中小企業にとって、これだけうれしいことはありません。

そして、もくろみどおり、クーポンを発行。
一時的にキャッシュフローは改善し、数ヶ月は会社は存続するものの、根本的な経営の解決にはならず、結局倒産。
クーポン期限前の倒産で、クーポン未使用の利用者もいました。

この件については、グルーポン側はかなり真摯な対応を取り、クーポン未使用の購入者には全額返金をしたそうですが。。。


この件は、詐欺とも呼べる問題ではないでしょうか。今後、キャッシュフローの一時的改善のためにグルーポンを使う会社が増えるのはとても危険なことです。

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グルーポン創設者が「広告的意義」を強調するには、それなりのわけがありそうです。グルーポンの企業側のメリットは、一見、色々ありそうですが、②や③のように、結局は実体がない利益。


今後日本でグルーポンが根付いていくためには、グルーポンを利用する企業の審査(経営状態、グルーポン利用目的)は必要になってくるでしょうね。


補足ですが、グルーポンが日本に進出する際に買収したQpod、この会社が日本のグルーポンのサービスの実質を担っていると思われます。
もともと、2010年7月に設立され、サービス開始一ヶ月で日本のクーポン系の売り上げNo1になったというふれこみですが、、、からくりとしては、赤字覚悟でiTuneカードを80%OFFで1万人に販売したことが、大きな要因だとか。資本金1億円という資金力があったからできたことです。
そして、2010年8月には、Grouponに約10億円で買収されています。Groupon日本進出の時期を狙ったかのような起業。
1億の費用で10億を稼いだわけですから、ウハウハですよね。

でもこれって、クーポン販売のノウハウがある会社って言えるのでしょうか。
アイデアと技術力を売りに、地道に勝負するベンチャー企業が少し可哀想な気もしますが。


まあ、今後のサービス展開で真価が見えると思います。

※写真はHESS COLLECTIONというワイナリー