2011年1月7日金曜日

Groupon:グルーポン


明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年あけて、日本から飛び込んできたニュースといえば、グルーポンのおせち問題。
今のところ、グルーポン側よりも、おせちを作成した会社がやり玉にあげられていますね。


もしこれがアメリカだったら、、
全額返金+5000円程度の品では済まず、明らかに訴訟問題になっていたでしょう。
マックのコーヒーが熱かったぐらいで訴訟を起こし、被害者が勝訴してしまうような国ですから。
一年の始まりを台無しにされたから、自分のお給料額の◯%分の慰謝料を払え、などという話しも出てきそうです。

さて、このグルーポンという会社と、そのサービスについて、少し考察してみたいと思います。

まず、グルーポンという会社ですが、2008年にシカゴで創立された後、たった数年で世界10カ国以上に展開されるまでにいたった、急成長企業です。
創設者が少しおもしろくて、いわゆるITベンチャーにありがちな、コンピュータサイエンス出身ではなく、専攻は音楽。
会社の創立当初の思いとしては、「儲けること」よりも、「人々にもっと色んなサービスがあることを知ってもらいたい」という社会貢献的な気持ちから始めたサービスらしいです。
今でも、グルーポンの存在意義は、より多くのサービスを消費者に知ってもらうための「広告的意義」が大きい、と強調しています。


利用者からしてみれば、安く商品やサービスを購入できることが一番の目的です。
一方、企業側の目的は、きちんと定義されておらず、企業側に任されている感があり、これが、今回のようなグルーポン問題を引き起こす原因になっています。
考えられる目的別に、ちょっと考察してみましょう。


目的①:広告
グルーポンが提示している本来の目的である、広告を目的とした場合。
この場合は、問題が起こることはあまり考えられません。企業としては、宣伝広告費の一部として、本来より安く商品を提供して、消費者に使ってもらうことで、利用者を増やしていく。
サンプルを配ったり、モニターを募集したりといった手法と近く、企業側に「費用」という意識があることと、対象人数を最初から絞っているため費用の総額を事前に把握できるため、クーポン発行後に、会社側に急に不利益が生じることはないでしょう。


目的②:売り上げ増加
今回のおせち制作会社は、「売り上げ増加」を目的として、クーポンを販売したようです。
クーポン500個が完売した時の社長のつぶやき、「一店舗分の売り上げが稼げた!」。
これ、どう思いますか?
確かに、通常の販売方法であれば50ぐらいしか売れなかったところ、500売れたら、売価が半分だとしても約10倍の売り上げになります。
しかし、ここでは「コスト」の意識が全く欠如しています。
注文を受けてから材料の発注、人の配置を検討し始め、結局予定通りに販売すると大赤字になることがわかってきて、原価ぎりぎりのところでとりあえず販売。結局、全額返金+さらにコストがかかるという、イタイ事態を招いてしまいました。

そもそもこういった、一定の原価が確実に発生する商品をわざわざ値引きして売る、という形態が、グルーポンにあまり向いているとは言えないでしょう。
アメリカでのサービスを見ていても、原価がもともとないもの(マッサージなどのサービス)、売らないとどちらにしてもコストになるもの(ホテルの空き室)、または上記①の広告目的(お客さんが最近減っているレストランなど)が多く、確実な原価が発生するものをわざわざ値引きして売ることに意味を感じる企業はあまりいないようです。

あまりに初歩的な計算で、ここを見誤る人っているの?と思ってしまいますが、とにかく売り上げを上げて企業を成長させなくてはいけないとプレッシャーを感じている経営者にとっては、陥りやすい罠と言えるのではないでしょうか。


目的③:短期のキャッシュフロー改善
これが、一番まずいです。
グルーポンが問題になったのは今回のおせちが初めてではなく、去年の11月にも京都のある飲食店で問題になったことをご存知でしょうか。

この会社は、倒産危機にあえいでいました。来月の借入金の支払いも間に合うかわからない。
会社というのは、どんなに資産があっても、ある日のキャッシュがマイナスになったら倒産ですから、いかにして現金を調達するかは、死活問題です。

そこで、目をつけたのがグルーポン。
このサイトを通せば、沢山のクーポンを即日売ることができ、即日に消費者の決済が行われる。中小企業にとって、これだけうれしいことはありません。

そして、もくろみどおり、クーポンを発行。
一時的にキャッシュフローは改善し、数ヶ月は会社は存続するものの、根本的な経営の解決にはならず、結局倒産。
クーポン期限前の倒産で、クーポン未使用の利用者もいました。

この件については、グルーポン側はかなり真摯な対応を取り、クーポン未使用の購入者には全額返金をしたそうですが。。。


この件は、詐欺とも呼べる問題ではないでしょうか。今後、キャッシュフローの一時的改善のためにグルーポンを使う会社が増えるのはとても危険なことです。

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グルーポン創設者が「広告的意義」を強調するには、それなりのわけがありそうです。グルーポンの企業側のメリットは、一見、色々ありそうですが、②や③のように、結局は実体がない利益。


今後日本でグルーポンが根付いていくためには、グルーポンを利用する企業の審査(経営状態、グルーポン利用目的)は必要になってくるでしょうね。


補足ですが、グルーポンが日本に進出する際に買収したQpod、この会社が日本のグルーポンのサービスの実質を担っていると思われます。
もともと、2010年7月に設立され、サービス開始一ヶ月で日本のクーポン系の売り上げNo1になったというふれこみですが、、、からくりとしては、赤字覚悟でiTuneカードを80%OFFで1万人に販売したことが、大きな要因だとか。資本金1億円という資金力があったからできたことです。
そして、2010年8月には、Grouponに約10億円で買収されています。Groupon日本進出の時期を狙ったかのような起業。
1億の費用で10億を稼いだわけですから、ウハウハですよね。

でもこれって、クーポン販売のノウハウがある会社って言えるのでしょうか。
アイデアと技術力を売りに、地道に勝負するベンチャー企業が少し可哀想な気もしますが。


まあ、今後のサービス展開で真価が見えると思います。

※写真はHESS COLLECTIONというワイナリー

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